ハイブリッドカーとアカデミー賞の関係は、今年も去年もその前も蜜月状態が続いている。
ここ数年、アカデミー賞授賞式で、
レオナルド・ディカプリオらハリウッドスターが、
トヨタのハイブリッド車「プリウス」に乗って赤いカーペットに登場しているのだ。
アカデミー賞会場のレッドカーペットにハリウッドスターが降り立つシーンは、
メディアの格好の撮影場所だ。
そこに高級リムジンではなく、
トヨタプリウスが、
それも何人ものトップスタ-たちがプリウスというハイブリッドカーに乗ってくるのだから、
世界的な話題になるのも当然だ。
アカデミー賞での話題をさらい、プリウスの認知度は急上昇。
ちょうど原油高も影響し、
燃費がいいといわれるハイブリッドカーは、
プリウスも売り上げが急増した。
2代目プリウスの販売台数は、
発売した2003年は4万3100台だったが、
2005年には17万5200台に膨らんでいる。
「ハリウッドスターはなぜプリウスに乗るのか―知られざるトヨタの世界戦略」という本が売れているが、
この本では、
トヨタがいかにプリウスを開発し、
育ててきたかを、関係者へのインタビューをもとにまとめている。
1990年代、
世界の自動車メーカーは燃費の良い「次世代のクルマ」の開発に走り出した。
そしてトヨタは、
奥田碩・現会長らトップが94年にハイブリッド車の開発を決断する。
開発責任者となった内山田竹志・現副社長はエンジン、コンピューターなど、
関係するエンジニアを一同に集めた「大部屋」式で開発をすすめた。
その結果、
設計から3年弱という短期間で、
世界初のハイブリッド量産車「プリウス」を市場に送り出すことに成功したのだった。
90年代半ばから、欧米のメーカーは、
自社ですべてを開発・生産する「自前主義」は、
コストが高くつくとして外注に向かった。
しかしトヨタは、自前主義にこだわり続けた。
ハイブリッドシステムでも、
根幹部品をグループ企業などと連携しながら自社グループで生産。
これが、ハイブリッドの技術競争で先頭を走る要因となった。
またトヨタは、「社徳」のある企業になるべく、
エコカーの1つとしてハイブリッド車に力を入れた。
ロハスなセレブが大人気の現在、
この先を見通す力はすばらしかった。
「環境保全に熱心」という評価を高めたトヨタに対し、
燃費は悪いがもうけの大きいSUV(多目的スポーツ車)の開発・販売にばかり注力した米ビッグスリーは凋落している。
トヨタは2006年中にゼネラル・モーターズ(GM)を抜き、
世界生産台数トップとなった。
この本からは、
プリウスを通して、トヨタの世界戦略も見えてくる。
決断の速さ、的確さ、意思の強さなど、
トヨタの「経営力の強さ」を再認識させられる。
「ハリウッドスターはなぜプリウスに乗るのか―知られざるトヨタの世界戦略」(朝日新聞社)
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